人の失敗から学ぶ

 「失敗学のすすめ」(畑村洋太郎著 講談社文庫)を読んだ。

 具体的な失敗の話はそれほど出ていなかったが、失敗する理由や失敗を活かすための方策が書かれていて面白かった。

 

 たとえば、ここにある製品を生産するシステムがあったとします。萌芽期に入ってきた人は、組織規模そのものが小さい段階でシステム開発を間近で見ているので、最も重要な全体の構成要素を把握しています。そのため発展期や成熟期になってシステムが広がりを見せても、全体的な視点からシステムを見ることができるわけです。

 ところが、次の発展期に入ってきた人は、システム全体を任されることはなく、部分的にしか取り扱うことを許されないので、システムの全体を見渡せるだけの能力が養われることはありません。この人が技術の発展に伴って必要となる規模の拡大、商品が大ヒットしたことによる大増産や、逆に商品が売れないことによるリストラ策など、条件の変化によってシステムを改良する必要が出てきた場合、システムを局部的にしか見ることができず、その局所では良くても全体から見れば致命的な悪である改変を行ってしまうことがあり得るのです。
 これを「局所最適・全体最悪」といいます

 何かこの部分を読んでいて、自分の仕事上でいえば、日常のプロジェクトなんかでも同じことが言えるような気がした。
 つまり、設立当時のメンバーはプロジェクトの意義とか目標がはっきりしているが、時間が経ち人事異動などでメンバーが変わり、携わる人間が増えていくと、全体像を把握しないまま自分の役割のみを気にする人が多数出てしまい、各人がベストを尽くしてもプロジェクトとしての成果が上がらないとか。


 組織として「全体最適」を目指すためには、トップはもちろん、各部署をマネジメントする立場である管理職の役割は大きい。



 それにしても「局所最適・全体最悪」状態が当てはまる会社組織は驚くほど多いのではないか。