アメリカにおける貧困と教育格差

 「ルポ貧困大国アメリカ」(堤未果著 岩波新書)を読んだ。

 

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

 アメリカは、新自由主義政策により、医療制度や教育制度の民営化が進む一方、コスト削減によりセーフティーネットが破綻していることから、国民の自己負担額が大幅に増えることにより、貧困層が増えている国だ。


 たとえば、教育面を見ると、教育予算が大幅に削減された結果、授業料が高騰し、奨学金も削減されたため、高額な学資ローンやクレジットカードにより学費をまかなう若者が急増し、自己破産する者やローン返済を軽減するため軍隊へ入隊する者が増えているという。
 自己破産した者やカード返済が滞った者はブラックリストに載り、大学を卒業しても、就職が難しくなり、賃金の低い職にしか、つけない。
 また、軍隊へ入隊した者の多くは、戦争が行われているイラクへ派遣されることから、帰還した後も重度の薬物やアルコール依存に陥ってしまう者が多い。
 こういった若者については、貧困は解消されるどころか、負のスパイラルに落ち込んでしまい、一生、社会の底辺で生活をしなければならないのだ。

 若者たちが誇りをもって、社会の役に立っているという充実感を感じながら自己承認を得て堂々と生きられる。それが働くことの意味であり、「教育」とはそのために国が与えられる最高の宝ではないでしょうか?
 将来に希望をもてる若者を育ててゆくことで、国は初めて豊かになっていくのです。

 しかし、盲腸手術で1日入院するとニューヨークでは243万円もかかるとは。世界一の医療費負担額である。それに比べ、日本では国民健康保険に加入していれば自己負担額は10万円弱である。

 
 何でも民営化すれば良いという訳では無いようだ。